防犯・安全教育としての性教育
先日、小学校での性被害についてショッキングなニュースを見ました。改めて、包括的性教育の大切さを感じ、大人にも子どもにも包括的性教育を知ってほしい。そして、自分自身の子どもとの向き合い方も改めて考えさせられました。
小さい頃から包括的性教育が行われることで、子どもたちを性犯罪の被害者にも加害者にもしないようにできるのではないかと思っています。被害に遭わないように、これはおかしいことだと気づけるように、被害に遭ってしまったときに、私は一体子どもに何が伝えられるだろう…と考えてみました。
性被害を防ぐために
性犯罪に対するイメージを見直す
皆さん、性犯罪と聞くとどのようなイメージを持っていますか。被害に遭うのは、年頃の女性…?加害者は、サングラスをかけてマスクをしている人…?時間帯は、暗くなったら危ない…?
自分の子どもが被害になんて考えたくもありませんが、幼児や小中学生などの子どもを狙った性犯罪のニュースを見たことがある方も多いと思います。性別も、女の子だけとは限らず、男の子も被害に遭います。また、暗くなってからではなく、子どもの下校時間を狙った15時ごろ~夕方などのまだ明るい時間に起こることが多いのです。
「変な人について行ったらダメ」「知らない人にはついていかない」などと子どもに伝えてはいませんか。加害者は、いかにも怪しい格好をしているものでしょうか…?多くの場合、加害者は『優しい人』『普通の人』『面白い人』だったりします。見た目だけでは判断できないことを、大人も理解しておく必要がありますね。
そして、子どもを狙う加害者も顔見知り、知っている人からの被害が多いと言われています。そして、子どもと大人では知っている人の定義が違うこともありますね。通学路で毎日すれ違う大人を子どもは知っている人と判断することもあります。「知らない人にはついていかない」という声掛けだけでは、子どもを守り切れません。知っている・知らないにかかわらず、ついて行くことは危険だと伝えたいと思います。
怪しい人、知らない人など曖昧な表現ではなく、具体的に伝えると子どもにも伝わりやすいのかなと思います。『周りから見えないところへ連れて行こうとする人』『急に話しかけてくる人』『用事もないのに、すごく近づいてくる人』『お菓子やおもちゃを買ってあげるからと言う人』など…こんなことをする/言う人には注意が必要だと伝えておくといいですね。
子どもの身を守るために伝えておきたいこと
プライベートゾーンのはなし
プライベートゾーンについてはすでにご存じの方も多いのではないかと思います。自分のからだは自分だけの大切なもの、その中でも特に大切なのが、水着で隠れるところ(胸・性器・おしり)と口。これを、プライベートゾーンといいます。
プライベートゾーンは、自分だけが自由に見たり触ったりしてもいい大切な場所です。なので、他の人のプライベートゾーンを勝手に見たり触ったりしてはいけないし、自分のプライベートゾーンを他の人が勝手に見たり触ったりしてもいけない。
どこを、見られたり見せられたり、触られたり触らせられたりしたら、おかしいことなのか、プライベートゾーンについて子どもに伝える必要があります。また、プライベートゾーンに限らず、からだを見られたり見せられたり、触られたり触らせられたりして、嫌だと思ったら「いやだ!」(NO)と言って逃げていい(GO)、そして信頼できる周りの大人に伝えてね(TELL)、ということも繰り返し伝えたい大切なことです。
快・不快の感覚を育てる
「大事なところを触らせてはいけないよ」と言うだけで子どもは守れるのでしょうか。プライベートゾーンについて伝えるだけではなく、何をされたら嫌だと感じるのか…快・不快の感覚を育てることも身を守るうえで大切なことだといえます。
『なんとなく変な感じ』『嫌な気持ちになる』『もしかすると危ないかもしれない』といった直感を大切にして、危険を感じたらすぐに逃げる。このように、快・不快の感覚を育てるには、まず快の経験を積むことがとても大切!
「気持ちがいいなぁ」「安心するなぁ」と感じる経験をたくさんしていれば、その反対の気持ちのときには、「これは気持ち良くない」「安心できない」とわかります。親子で触れ合う時間を作ったり、トイレやお風呂ですっきりしたね、気持ちがいいねと伝えたり…家庭でできることもたくさんありそうです!
何でも話せる関係づくり
子どもが危険なことに遭遇したとき、性被害に遭ってしまったとき、私に子どもたちは話してくれるだろうか…と考えてしまいます。3人の子どもを育てながら余裕がなく子どもに当たってしまうこともあれば、してはいけない(と私が思っている)ことを子どもがすると怒ってしまうこともあります。もしかすると、怒られるかもしれない…と被害を打ち明けてくれないかもしれない、なんて考えることもあります。
何かあったときに子どもが話してくれる関係を築いておくことも、大事な防犯対策のひとつです。改めて、日々の子どもとの関わりが大切だと感じます。性をタブーにしない環境をつくったり、子どもとの信頼関係を築いたり、日々の積み重ねが大切になってくると思うので意識して子どもたちと向き合いたいと思います。
性被害に遭ったら…
打ち明けてくれたことを受け止める
子どもが被害に遭うなんて考えたくもないですが、万が一遭ってしまったら…。被害を受けた人は、深く深く傷ついています。恐ろしくて、辛くて、被害に遭ったことを誰にも言えないのは当たり前のこと。言えないけど、助けてほしい…勇気を振り絞って被害を打ち明けてくれるのだと思います。そんなとき、あなたは最初に何と言いますか?
❁「よく話してくれたね」
「あなたに隙があったから」などと、被害に遭った人を責める言動は決してしないこと。被害者を信じて話を聞くこと、気持ちをそのまま受け止めてあげてください。被害に遭ったことを、「たいしたことない」「早く忘れなさい」「あなたなら乗り越えられるわ」と勝手に決めつけるのもNGです。
傷を負った子どもに必要なのは、苦しみを受け止めて味方をしてくれる存在。「私はあなたの味方」「側にいるよ」「一緒に考えるよ」と示してあげましょう。
悪いのは100%加害者!
もし被害に遭ったとしても、決して被害に遭った人は悪くありません。悪いのは100%加害者なのです。しかし、被害に遭ったにもかかわらず、子どもは自分の責任のように感じてしまうことがよくあるそうです。
❁「あなたは何も悪くない」
決して子どものせいではないということを伝えるように接することが大切です。被害に遭った人のこころとからだをそれ以上傷つけないためにも、この意識はしっかりと思っておきたいと思います。
相談窓口
子どもが被害に遭ったときに相談できる場所は知っていますか?一緒に考えてくれる人がたくさんいますので、一人で抱え込まないようにすることが大切です。
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターのことはご存じでしょうか?性犯罪・性暴力の被害相談に対して、医療、こころのケア、法的相談などを1か所で総合的に支援する相談窓口です。
各都道府県に設置されており、内閣府のホームページ『性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧』で確認ができます。全国共通の電話番号もありますので、電話相談もできるようです(全国共通電話番号→#8891)
こんな相談窓口があるんだ!と知っているだけでも心強いかと思います。他にも、性犯罪被害相談電話全国共通番号(#8103)もあります。これは、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話窓口につながります。
まとめ
子どもに性被害に遭ってほしくないと思う気持ちは、みなさんお持ちだと思います。性犯罪の実情を知り、子どもを守るための方法を繰り返し伝えることが大事だと感じます。そして、子どもとの信頼関係…普段から心配を話せる関係を作り、何かあったら頼ってもらえるようにしたいと思います。
小学校での性被害のショッキングなニュース…加害者は小学生です。子どもに包括的性教育が行われていれば…自分も他の人のからだもとっても大切なものなんだと教えられていたら…何か変わっていたでしょうか。大人が性教育をないがしろにしてきたことで起こったことであれば、私たち大人もきちんと性と向き合わなければなりません。
そして、このニュースは被害児童への2次被害も問題となっています。ケアをする大人が適切な対応を知っていれば、子どもの傷をさらに深くすることはなかった…防犯・安全教育としても包括的性教育が広まるといいなと思って、この記事を書きました。ご家庭でも、ぜひ共有していただき、考えていただきたいと思います。
最後に今回の記事を書くときに参考にした書籍をご紹介したいと思います。『親子で話そう!性教育』という本。どうして今性教育が必要なのか、性被害から守るために何ができるのか、わかりやすくまとまっており読みやすいので、気になる方はぜひ読んでみてください。